
4回目のセッション。食事の話が一段落すると、先生は次に、トレーニングの話を切り出した。
先生いわく、筋肉を大きくするには、7〜12回で限界がくるくらいの負荷でトレーニングするのが良いらしい。
ダンベルフライもダンベルプレスも、今は10kgのダンベルで12回を3セット、こなせるようになっている。始めた頃は7kgでもきつかったのに、と思うと、少し誇らしい。でも裏を返せば、それは、今の負荷が軽くなってきたということでもある。
「そろそろ、もっと重くする必要がありますね」
先生は続けた。
「一番いいのは、ジムに通うことです。いろいろな機械で、全身を鍛えられますから」
……出た、ジム。
正直に、「最寄り駅にジムがないので、難しいです」と伝えた。
でも、本当のところを言えば——たとえ駅前にジムがあったとしても、たぶん何か理由をつけて、断っていたと思う。通うのは、やっぱり面倒だから。
「近くのスポーツセンターはどうですか?」と聞かれて、「調べてみます」と、とりあえず答えた。これも正直、腰が重いなと思いながら。でも、何か答えないといけない気がして。
……食事のことは、あんなに前のめりで、自分から提案できたのに。ジムの話になった途端、これだ。自分でも、現金なものだと思う。苦手なことの前では、人はこんなにも簡単に、後ろ向きになれるらしい。
セット数を増やせば、時間がかかる。ジムやスポーツセンターには、どうにも足が向かない。じゃあ、どうするか——それは、これから考えていきましょう、ということになった。とりあえず今は、家のダンベルで、できる回数を増やせるなら増やして、少しずつ負荷を上げていくことにした。
そして、もうひとつ。トレーニングは、フォームも大事だという話になった。
これまでは、YouTubeの動画を見ながら、見よう見まねでやってきた。合っているのかどうか、本当のところは、自分ではわからない。それを、フォームの確認も含めて、一度、先生と一緒にやってみることになった。
実際に、目の前で見てもらえる。それは、なんだか楽しみだなと思った。面倒くさがりの自分でも、これは、素直にそう思えた。
毎週のように”通う”となれば、やっぱり気が進まない。でも、一度だけ、先生と一緒に行くだけなら——それなら、できる気がした。同じジムでも、ハードルの高さが、まるで違う。
3月8日、月曜日。先生がいつも通っているジムで、一緒にトレーニングをする約束をした。
ジムには通わない。ずっと、そう言い続けてきた。
その自分が、初めて、ジムに足を踏み入れることになる。
どうなることやら。でも、ほんの少しだけ——楽しみにしている自分も、たしかにいた。
(第20話へ続く)



