第26話 走ったら、気づかれた

増量日記

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4月8日、水曜日。草野球の開幕戦だった。

試合をするのは、去年の10月以来になる。

12月に先生と話したとき、僕はこう言っている。来シーズンには、柵越えのホームランを打てる身体にしたい、と。

その来シーズンが、今日から始まる。

グラウンドに着いて、チームのみんなと顔を合わせた。半年ぶりに会う人もいる。

反応は、なかった。

誰も、何も言わなかった。ユニフォームがもともと大きめだから、というのもあったかもしれない。

正直、ショックだった。

48.4kgから始めて、今は54kg台まで来ている。家でダンベルを持ち、4月からはスポーツセンターにも通い始めた。それでも、見た目はそれほど変わっていないのだと、あらためて突きつけられた気がした。

ただ、今までとは少し違った。

去年の12月にも、同じことがあった。実家に帰って、両親にも兄妹にも気づかれなかった。あの時の僕は、ずいぶん落ち込んで、それで終わっていた。

今回も落ち込んだ。ただ、そこでは終わらなかった。

スポーツセンターは、1回600円。月に8回通うとして、4,800円になる。安くないな、と思いながら、それでも払うと決めた金額だ。

せっかくお金を使うのだから、もっとやろう。

落ち込んだあとに出てきたのは、そういう気持ちだった。

アップが始まって、素振りをした。

バットを振ってみて、自分でも驚いた。

軽い。

思っていたよりずっと軽く感じるし、スムーズに振れる。半年ぶりなのだから、もっと重く感じるはずだった。

この日は9人ギリギリの人数で、僕の打順は8番、守備はセカンドになった。

このチームには10年ほどいる。もともと飛距離が出るタイプではないので、2番か、下位打線を打つことが多い。今日もいつもどおりだ。

第一打席が回ってきた。

ファールを打った。

その打球が、思っていたより強く飛んでいった。ライナーで、相手ベンチのほうまで。

軽く当てただけだ。今までなら、ボテボテのゴロになっていたと思う。

バットに当たった瞬間、ボールに押される感覚がずっとあった。それが、この日はなかった。当たり負けをしていない。

結局この打席は、フォアボールで塁に出た。

一塁に立って、少し走ってみた。

足が、動く。

40歳を超えてから、僕は「もう身体が動かないから」と言い訳をして、盗塁をしてこなかった。走る気がなかったと言ってもいい。

なのに、走ってしまった。

セーフだった。ベンチのほうを見ると、みんなが「体、動いてますね!」と言ってくれた。

見た目には、誰も気づかなかった。気づかれたのは、走ったときだった。

この日は味方のピッチャーの調子がよくて、相手にほとんど打たれなかった。おかげで、セカンドの守備機会は一度も回ってこなかった。

結果は、2打席で2フォアボール。盗塁2。守備機会なし。試合は7対1で勝った。

打席には2回立ったけれど、バットに当てたのはあのファール1本だけだ。柵越えどころか、まだ何も打っていない。シーズンは、始まったばかりになる。

もうひとつ、家に帰ってから気づいたことがある。

疲れが、今までより軽い。半年ぶりの試合なのだから、翌日に響いてもおかしくないはずだった。

そして、この日の21時30分からは、先生とのセッションが入っていた。

前回の宿題の話を、しなければならない。

この週のデータはこちら。

日付体重(kg)カロリー(kcal)タンパク質(g)脂質(g)炭水化物(g)食物繊維(g)
4/654.72,177108.747.5343.513.0
4/754.62,180123.451.9317.17.9
4/854.82,421106.262.8366.412.8
4/954.42,293110.830.3391.97.0
4/1054.92,366104.851.5386.810.5
4/1155.02,092107.545.6327.110.8
4/1254.32,423124.974.0335.310.5
週平均54.72,279112.351.9352.610.4

先週末:54.3kg → 今週末:54.3kg(±0kg)


±0kg。週のはじめと終わりで、数字はまったく同じだった。土曜日に一度だけ55.0kgが出たけれど、翌日には戻っていた。

見た目も、誰にも気づかれていない。

この週の僕は、盗塁を2つしている。

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