
マインドの話が一段落したところで、僕はトレーニングについて質問した。
重量と回数を少しずつ増やしていく。そう言われても、今の家でのメニューでどこまでやれるのか、正直わからなかったからだ。
先生の答えは、こうだった。
「1週間で、トレーニングのセット数と回数を落とさずに行えれば、問題ないです」
1週間で。
そこで、自分の生活の話をした。会社は週2日のシフト制で、休みの曜日が毎週決まっているわけじゃない。だから「毎週◯曜日にトレーニング」という決め方ができない。
すると、先生はこう提案してくれた。
「では、週2日のお休みに、全身のトレーニングをしてはどうでしょう。各部位のセット数を落とさないようにすれば、それで大丈夫です」
休みの日。
その発想が、まったくなかった。
僕はずっと、平日の夜にどう組み込むかで考えていた。会社帰りに寄れるジムがない。だから通えない。そう決めつけていた。
でも、休みの日ならどうだろう。
家から車で5分のスポーツセンター。帰宅する時間には営業が終わっているから、選択肢から外していた。
休みの日なら、開いている。
前提が、ひとつ外れた気がした。
ただ、気が進まない理由が消えたわけではない。
知らない人がいるところで身体を動かすのは、やっぱり気を遣う。それだけで疲れてしまう気がする。ジムに行った日、奥のエリアで圧倒されたことも、まだ覚えていた。
とにかく、一度見てみないことには始まらない。
そう思って、次の日にスポーツセンターの下見に行った。
トレーニングルームに入って、まず設備を見た。
ダンベルは20kgまである。今使っているのが10kgだから、当分は困らない。
マシンも、チェストプレス、ペクトラル、レッグプレス、ラットマシン、ローロウ。自分がやりたいと思っていたトレーニングは、ひと通りできそうだった。
予約もいらない。行きたい時に、そのまま行ける。
これは、僕にとってはかなり大きかった。シフトが決まってから予約を取る、という手間がないだけで、通える気がしてくる。
そして、いちばん安心したこと。
その日、トレーニングルームにいたのは、6人ほどだった。しかも、本格的にトレーニングをしている人は、そこまで多くない。
先生のジムで見た、あの光景とは違う。始めたての自分には、このくらいがちょうどいい。そう思えた。
最後に、料金を確認した。
トレーニングルームの使用が、1回300円。駐車場が、300円。合わせて、1回600円。
月に8回くらい通うとして、約4,800円。
正直、安くないなと思った。
ただ、ほかに選べるものもない。最寄り駅にジムはないし、ひとつ前の駅のジムに通う気には、どうしてもなれなかった。
しょうがない。そう思った。
きり良く4月から通うことに決めた。
ジムには通わない。ずっと、そう言い続けてきた。
結局、僕が通うことにしたのは、ジムではなかった。家から車で5分の、スポーツセンターのトレーニングルームだ。
消去法だ。胸を張れるような選び方じゃない。
それでも、通うと決めたことに変わりはない。



